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化学系実習1

​2日目 抽出・濾過

目的
試料溶液からの有機化合物の分離には溶媒の極性を変えての抽出, 酸・アルカリによる分配,クロマトグラフ法などがある.ここでは主 に酸およびアルカリを用いた分離を行い,pH と物質の溶解性の変化 の関係を理解する.
物質の分離精製には,固体であれば再結晶が,液体であれば蒸留が よく用いられる.こうした精製の基本操作を学ぶ.

実験操作
 

① 市販の濃塩酸を用いて約1mol/L(以下1Mと表記)の水溶液100 mLを調製する. (1 日目に調製済み)

② 水酸化ナトリウムを用いて2 Mの水酸化ナトリウム水溶液200 mLを調製する. (1 日目に調製済み)

事前実習動画 1 , 2 , 5 , 6 , 7 , 8 , 9  を確認のこと

​実際の作業: 水溶液の作成(1日目)

​動画説明

・事前に計算をしておきます。

  HCl は 10mL を 精製水を使用して 100mL にメスアップ

  NaOHは 16g を 精製水を使用して 200mL にメスアップ

 

・濃い酸は水に触れると、急激に発熱するため、敷き水および氷冷が大切。

・酸は手にかかると火傷様症状を引き起こします。手袋は必ずしましょう。

・塩酸は塩化水素ガスを水に吸収させたものです。

・塩化水素ガスがでるため、ドラフトで作業します。

・NaOHは潮解性を示します。量りとったらすぐに容器に移します。

・皮膚が溶けるため、素手で触ったりしないように気をつけてください。

※酸も塩基も共に、人体への障害能は高いです。

自分が被害者にも加害者にもならないように、必ず、実習室では 白衣 および 保護メガネ の着用をお願いします。

​すぐに動ける様に、足元には物は置かず、作業中は椅子に極力座らない様にお願いします。

③ まず安息香酸,アニリン,ベンズアニリドの性状を確認し記録する.

  情報として「固体か液体か」「色」「粘性・流動性」を確認する

② 安息香酸(0.5 g・薬包紙),アニリン(0.5 g・100 mL 三角フラスコ),およびベンズアニリド(0.2 g・薬包紙)を量り取り,ジエチルエーテル(約 80 mL) に完全に溶解する.(アニリンが入った三角フラスコに全てを入れ,溶けに くいようであれば更にジエチルエーテルを用いても良い.実習室後方の超 音波洗浄機を利用すると溶かしやすい)

  「秤の使用方法」「薬包紙の使用法」「試薬の計り方」に注意する

​実際の作業: 各試薬の秤量

​動画説明

・事前実習動画のように各試薬を計っていきます。

・蓋を開けたら、すぐに締めましょう。次の人がいても、必ず締めてください。

・こぼしたら、すぐに片付けてください。

・たかが粉末と思うでしょうが、安息香酸は立派な「酸」です。

・アニリンは「塩基」です。人体への影響、器具への影響を考えてください。

※化学系実習では、何かが手についたら、すぐに洗い流すようにしてください。

こうした化学物質を人体への影響を考えながら、正しく取り扱えるようになるのも「薬学部卒」の強みです。

​実際の作業: 薬包紙の折り方

DSC_1891.JPG

​実際の作業: 化合物の溶解

​動画説明

・アニリンを入れた三角フラスコにジエチルエーテルと残りの試薬をいれる。

​・壁面についた粉体も、しっかりと溶媒で洗い落とす。

・溶けづらい化合物は超音波を利用すると、手早く溶解させることができる。

​・全てが溶けるまで待ちます。

​※安息香酸: 0.48 g 、ベンズアニリド: 0.20 g 、アニリン: 0.57 g

⑤ ジエチルエーテル溶液を分液ロートに入れ,1M HCl(約 30 mL/回)で 3 回抽出する. 抽出液を三角フラスコ(300 mL)にまとめる.

  「分液ロートの使用法」に注意する. 

⑥ 残ったジエチルエーテル溶液を,2M NaOH(約30mL/回)で3回抽出する. 抽出液は別の三角フラスコ(300 mL)にまとめる.

  「化合物の行方」を意識して実習に望む

​実際の作業: ⑤の分液作業(塩酸)

​実際の作業: ⑥の分液作業(水酸化ナトリウム)

​動画説明

・事前実習動画の分液の項目を必ずみてください。

​・作業に慣れていない方は、溶液を移す際にピペットを用いるとよいでしょう。

・実験器具は、中身が混ざらない様に、しっかりとラベルをしてください。

​・違う作業をするときには、綺麗な洗浄済み器具を使用してください。

・分液を振り始める一回目が特に危険なので、逆さにした後はすぐにコックを開いてください。

​・この中でも⑥の分液作業では、NaOH溶液をいれた瞬間に中和反応が起こります。本当に危ないので注意してください。

⑦ 1M HCl および 2M NaOH で抽出し終わったジエチルエーテル溶液を飽和食塩水(約 30 mL)で洗浄する.その後,ジエチルエーテル溶液を三角フラ スコ(100 mL)にとり,無水硫酸ナトリウム(薬さじ大 2~3 杯,目安はふ り混ぜた際,粉末が舞う程度)で乾燥する.10 分程度乾燥した後,硫酸ナトリウムをろ過で除き,溶媒を減圧下留去(エバポレーター使用)する. 濃縮する際,初めは大き目のナス型フラスコで濃縮し,その後予め風袋(空 の状態の重さ)を量った50 mLのナス型フラスコに完全に移し替える.移し替えた後,再度,エバポレーターで十分に溶媒を飛ばし,周りの水分等 を拭き取った後に回収量を求める.なお,移し替えの際はアセトンに溶解する.
  各工程で何をしているのかを意識する.

​実際の作業: ⑦の分液作業(飽和食塩水)+乾燥剤

​動画説明

・事前実習動画の分液の項目を必ずみてください。

​・飽和食塩水で「洗います」。

・しっかりと有機溶媒と水溶液が分離するまで待つのがポイントです。

​・乾燥剤はしっかり粉体が舞う程度まで加えてください。

​実際の作業: ⑦のろ過+減圧濃縮

​動画説明

・事前実習動画の濾過、エバポレーターの項目を必ずみてください。

​・ひだおりろ紙による自然ろ過を行います。

・ろ紙に化合物をできるだけ残さない様に心がけます。

​・エバポレーターは順序が大切です。

​・どのタイミングで溶媒が留去されていくかを考えるとよいでしょう。

​実際の作業: ⑦の移し替え+収量確認

​動画説明

・事前実習動画の溶媒の移し替え、収率の項目を必ずみてください。

​・風袋を測定したサイズの小さいナスフラスコに移し替えます。

・この移し替えはアセトンで行います。

​・最少量で、洗い込みを繰り返します。

​・液量が多くなった場合は、途中で減圧濃縮し、洗い込みをします。

​※ 67.39 - 67.20 = 0.19 g (収量)

 (0.19 / 0.20) x 100 = 95 %  (収率)

⑧ 操作⑥で得られたアルカリ水溶液を氷冷し,注意深く濃塩酸を加え酸性とし(ドラフト内で作業を行いユニバーサル pH 試験紙で pH を確認する), 析出した結晶をブフナー漏斗にろ紙を引き,吸引ろ過する.結晶を少量の水で洗浄する.ブフナー漏斗のまま,静置する.
  pHと化合物の構造変化を意識する.

​実際の作業: ⑧の作業

​動画説明

・中和反応はかなりの熱が発生します。必ず、氷中で行います。

​・実習帳 P.41の計算は、中和点を求めています。

・酸性にするためには、この計算量を超える必要があります。

・pH試験紙でpHを確認しながら、濃塩酸を加えていきます。

・ある程度入れると、固体が見え始めます。

・pHと固体を指標にし塩酸を加えるのをやめます。

・吸引ろ取により、化合物を回収します。

​・今回はここまでです。

⑨ ⑧のろ紙から乾燥した化合物を回収し,重さを計り回収量を求める.
  pHと化合物の構造変化を意識する.

b1.jpg

画像説明

・乾燥後の重量です。

・0.48 g だったのものが  0.19 g となりました。

・収率 40 %となりました

・今回、安息香酸は結晶化により、回収しました。

・pHによる分子型/イオン型による結晶化法です。

・この方法は、分子型になると有機化合物が水に溶解しづらいことを利用しています。

・安息香酸は 溶解度 20℃ で 0.29 g/100 mL水 のため、溶媒量が増えると、pHを下げても、化合物が析出しません。分液の手技、pHをどこまで酸性にするのか、溶媒量のバランスによって、析出量が決まってきます。pHを傾けるために、HClを大量に使用しても、溶媒量が増えてしまい、結果、化合物が析出しなくなることすらありえてきます。

⑩ ⑦の回収化合物にメタノール(0.2 g あたり 3 mL)を加え 60°Cの水浴上で 加熱溶解させ,その後室温までゆっくり冷却する.結晶が析出する様子を観察する.
 
 再結晶の原理を理解する.

​実習動画: ベンズアニリドの結晶

​動画説明

・実習書の内容に沿ってやっていきます。

・回収量にあわせて、メタノールの量を計算します。

・その後、クランプつけて、加温します。

・全てが溶解するまで攪拌しながら温めます。

・その後、放冷し、結晶が出るまで待ちます​。

​実習動画: ベンズアニリドの結晶

​動画説明

・小さな結晶核ができるまでは、結晶はできません。

・ゆっくりと時間をかけることが大切です。

・結晶核ができると、そこから次第にゆらりゆらりと漂いながら成長します。

・分子がクラスターを形成していく際の移動やエネルギー変化に伴い、新たに結晶が増えていきます。

⑪ 操作⑤で得られた酸性水溶液を氷冷し,2MNaOHをアルカリ性になるまで 注意深く加える.(1 日目で最低必要量を計算,ユニバーサル pH 試験紙で確認)その後,ジエチルエーテル(30 mL/回)で3回抽出する.ジエチルエーテル溶液を無水炭酸カリウム(薬さじ大 2~3 杯)で 10 分程度乾燥する.炭酸カリウムをろ過で除いた後,エバポレーターを用いて溶媒を留去する.最終的に予め風袋を量った50 mLナス型フラスコに移し替えて回収 量を求める.残留する溶媒を完全に除くため,エバポレーターで濃縮した後,実習室後方にあるダイヤフラムポンプを用いて溶媒を完全に留去する. (教員が実施するので依頼する)
 
 pHと化合物の構造変化を意識する.

​実際の作業: ⑪のpH調整

​動画説明

・中和反応はかなりの熱が発生します。必ず、氷中で行います。

​・実習帳 P.41の計算は中和点を求めています。

・アルカリ性にするためには、この計算量を超える必要があります。

​・攪拌しながら、少量の水酸化ナトリウム水溶液を加えていきます

​・ある程度まで入れたら、pH試験紙でpHを確認します。

​・アルカリ性になるまで、これを続けます。

​実際の作業: 分液ロートの洗浄

​動画説明

・新たに分液をする場合、分液ロートを洗う必要があります。

​・⑦で使用したため、飽和食塩水とジエチルエーテルが入ってます。

・そこで、分液ロートを最初にアセトンで洗い流します。

​・アセトンにより、有機化合物と水が流れ、塩が遊離します。

​・次に、水で洗浄し、塩を流します。

​・最後に、精製水で流して、洗浄は終了です。

・分液ロートは水溶液をします。濡れたまま、使用して構いません。

​実際の作業: ⑪の分液作業+乾燥剤

​動画説明

・ジエチルエーテルを用いて、分液を行います。

​・水層に目的化合物が存在するため、分液後、上層を回収します。

・再度、水層を分液ロートにいれ、再抽出します。

​・溶液を振り混ぜた後、しっかりと二層になるまで待ちましょう

​・上層を一つの容器に回収し、乾燥剤を入れます。

​・乾燥剤が舞い上がるまで、入れていきます。

​実際の作業: ⑪のろ過+移し替え+収量確認

​※ 44.73 - 44.23 = 0.50 g (収量)

 (0.50 / 0.57) x 100 = 71.43 % ≒ 71 % (収率)

​動画説明

ひだおりろ紙による自然ろ過を行います。

・ろ紙に化合物をできるだけ残さない様に心がけます。

​・エバポレーターは順序が大切です。

・今回は液体が残るはずなので、エバポレーターを適度に止めます。

​・風袋を測定したサイズの小さいナスフラスコに移し替えます。

・この移し替えはジエチルエーテルで行います。

​・最少量で、洗い込みを繰り返します。

​・液量が多くなった場合は、途中で減圧濃縮し、洗い込みをします。

・エバポレーターでは溶媒留去が不十分です。

・さらに高真空のダイヤフラムポンプにて、残留溶媒を飛ばします。

・このとき、温度に着目すると、溶媒が飛び切ったか判断できます。

・溶媒は気化する際に、エントロピーを増大させるため、周りのエネルギーを奪います。つまり、残存液はどんどん冷えていきます。

・溶媒を飛ばし切ったら、収量を確認します。

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最後に

・洗い物は極力最後に行います。

・各溶液が残っていれば、ミスをしても、回収が可能です。

​・メスシリンダーやピペット類は数に限りがありますので、適宜、洗って乾かして使用してください。

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